法医学昆虫学のベストプラクティス-スタンダードとガイドライン

 Amendt ほか、2007の論文に欧州法医昆虫学協会による法医昆虫学の実践法がまとめられてます。翻訳してますので必要な方は声かけてください。日本もこのレベルに追いつく努力が必要だと思う。

 

 守るべきことだけを抜き出すと以下のとおりです。

昆虫学的証拠を収集する方法

 検体の保存には70~95%エタノールを使用し、健康上および安全上の理由から、また組織の形態学的および分子的同定のための保存が不十分であるため、ホルマリン/ホルムアルデヒドは使用しない。

 

幼虫:採集時に調査に用いる昆虫の用途が曖昧な場合や飼育が不可能な場合には、採取したすべての標本に対して殺処分を行うことを推奨する。

 

蛹:既知の温度条件下で生きた昆虫試料を維持する。

 

昆虫学的証拠の収集場所

 必ず遺体とその周辺を確認し、昆虫学的な証拠がないかチェックする。

 遺体の異なる部位を採取し、異なるラベルの付いたバイアルに証拠を収集する。

 

  死体上で発生した最も成熟した昆虫標本(成虫、囲蛹、蛹、摂食後および摂食中の幼虫、または卵)と、ハエまたは甲虫の蛹の抜け殻などの残骸を採集する。

 

現場の微気候条件

 昆虫の成長段階に基づいて死亡時期を推定するには、信頼できる温度データのみを用いる。

 

未熟段階の飼育

 すべての成長段階を、制御され記録された温度と湿度の条件下で飼育する。

 

同定

 信頼性の高い識別キーを用いて未成熟な検体(特に幼虫)を識別し,検体中の最も成熟した検体を確認する。例えば、幼虫については成長段階(第1、第2、第3、摂食後、前蛹)を記録する。

 

死後経過時間推定法

 ハエの幼虫の年齢を決めるには、以下のことが不可欠である。

 

1.幼虫の大きさ(長さ・重量)、成長段階(1,2,3齢)を測定し、摂食しているか摂食後であるかを判定する。

2.幼虫が成長中に体の内外で暴露された温度を正確に測定する。

3.幼虫の大きさと摂食時期を、適切な実験文献や、異なる温度での齢に対する大きさと時期のデータベースを用いて、それらの齢と関連づける。

 

(B) 積算時度 (日度) の計算

 最も老いた個体の最小成長期間を示すこと。

 

 Amendt, J., Campobasso, C.P., Gaudry, E., Reiter, C., LeBlanc, H.N., Hall, M.J., 2007, Best practice in forensic entomology—standards and guidelines, Int. J. Legal. Med., 121(2): 90-104