法医学の教科書にかかれてある法医昆虫学的手法

日本語の最近の法医学の教科書では、法医昆虫学的手法は僅かしか記述がないのと、かなり雑です。海外の研究をフォローしてない、それもここ数十年も。これでは死後経過時間を正確に求めるのは無理です。日本の科学捜査のレベルがこの程度だと、心配になります。

 

Newエッセンシャル法医学(長尾正崇, 中園一郎, 山内春夫編、2012)では「ウジの成長を夏が2mm/日、それ以外の季節で1mm/日として、これを1.2で割る方法もあるが、ハエの種類、気温などによって成長の速さは異なるので、昆虫学の知識なしには正確に判断することは出来ない」と書かれてあります。正確に死後経過時間を推定するには種ごとの成長速度と温度の関係の基礎データと遺体の経た気温から計算する必要があるので、夏が2mm/日、それ以外で1mm/日なんて雑すぎます。

 

死体検案ハンドブック改訂3版(的場梁次,近藤稔和編著、2014)では各月における卵とウジの体長と死後経過日の表があります。しかし種ごとに成長速度は違う。表には卵もあるけど、ニクバエはウジを産む卵胎生です。大雑把に迅速に死後経過時間を推定する必要があるなら、この表も参考にはなるけれど、その程度です。

 

死体検案ハンドブック第4版(近藤稔和,木下博之編著、2020)では法医昆虫学の記述が大幅に削減され、「蝿の成長速度も死後経過時間推定の参考となり,羽化して成虫になったもの(蛹の抜け殻)があれば,一般に2週間程度は経過している。」というだけになりました。間違いはないけど、法医昆虫学は死後経過時間の推定にもっと使えます。